社長に他の映像制作会社との違いを聞いてみた|ムービーインパクト社長インタビュー
2019.04.10
ライター:梶川美輪子
他の制作会社と比較して、どういったところが特徴ですか?
神酒:ディレクターが脚本、編集、撮影をひとりで全部担当するところですね。映像業界では、脚本は脚本家、撮影はカメラマン…と分業が当たり前ですが、 ムービーインパクトでは、ディレクターが一貫制作。これは、一番の強みになっていると思います。
クライアントにどんなメリットがあるのでしょうか
神酒:基本的に他社やフリーランスにも外注しないので中間コストをなくせますよね。
あとは、社内ディレクターが担当するので、コンテンツのクオリティーが安定します。方々に外注したらばらつきますよね、どうしても。私自身、以前は外注を受ける側としてテレビや映画の現場も経験しましたが、 ウェブ広告は、予算の規模や求められるスピードが全然違った。 うちは、すべてを把握したディレクターが、それぞれの工程で臨機応変に対応しています。なので、お客様にリピートしていただくことが多いですね。
内容的には面白くインパクトのあるコンテンツを求めて来られると。
神酒:もちろん、真面目な企業PR動画のスキルもありますが、ウチに興味を 持ってくださるのはそういうお客様ですね。社名がムービーインパクトですし。あとは、「早い」「丸投げできていい」と言ってもらえます。
どんな流れで制作するんですか。
神酒:最初の打ち合わせでディレクターがお客様の思いを直接伺うんです。 売上を上げたいのか、有名になりたいのか…コンバージョンを引き出してから、それを叶えるための脚本を書く。
打ち合わせから1週間程度で、字コンテで何案か提案するんですが、脚本段階でディレクターは「あのレンズ使って、この役者で…」までイメージで きるんですよ、自分で撮影するんで。予算感も自分の中ですり合わせながら脚本書いてますね。
予算内でどこまでできるか、即提案できますね。
神酒:ディレクターが直接話し、納得していただきながら進めるので、最終的なコンテンツも、お客様との間で相違ないものにできると思います。 ディレクター指名で再発注が入ることもあったり。嬉しいですよね。
ディレクターの能力がコンテンツのクオリティーに直結しますよね。
神酒:そうですね。ディレクターには、かなりハードルの高い仕事をやって もらっていると自覚しています…。
ウェブ広告でのキャリアを見るのではなく、才能やセンスを感じた人を口説いて入社してもらうパターンが多いですね。 厳しいことで有名な時代劇の現場で働いていた市原くん、タイトルは言えないですけど有名刑事ドラマの現場でずっとやってきた滝本くん、今育休中ですが、 ロシア出身でジャーナリズムを学んでいたサーシャさん。ディレクター陣はユニークな経歴ばかりです。
ムービーインパクトの制作費は、一見安いかもしれないですけれど、社外にばら撒いてないので、クリエイターにじゅうぶん還元できていると思います。
動画広告の配信や運用も受注しています。そちらもディレクターがするのでしょうか。
神酒:配信、運用は加藤が担当しています。加藤は元プログラマーで、画像処理を専門にしていた人です。今は広告配信の数値を見て設定を最適化したり、レポート作成するのが主な仕事です。
これまでかなりの本数を配信してきた蓄積もありますし、動画の導入部分の改善とかコンテンツ全体の改善ノウハウを持っています。
「なんとなく」面白いだけの動画広告じゃなくて、 ちゃんと数字で見ているので「効く動画広告はこれだ!」というのがわかってるんですね。動画広告は作ってからが大事ですから助かります。
運用結果は担当ディレクターにフィードバックして、次のコンテンツ制作に活かします。特に、動画を複数制作すると一目瞭然です。一番注目しているのはオーディエンスリテンションです。
正直なところ、動画1本だけでは結果が出にくいことが分かっていて…釣りに例えるのは不謹慎かもしれませんが、CM1本釣りではなく、最低でも3本は作って、網を打つ。その中で一番良かったコンテンツを繰り返し配信したり、マイナーチェンジしたり…というのが一番運用効果が出ますね。
他にも、配信先ごとに細かなテクニックを使っていきます。
ウェブ広告ならではですね。他にも何かコツはありますか。
神酒:出演者の肖像権に気をつける、ということでしょうか。めちゃくちゃ見られているコンテンツなのに、肖像権期限が来てしまい泣く泣く下げる、ということが起こるんですよ。
一般的な芸能事務所は期限を設けることが多いので、キャスティングは悩みの種ですね。
どうクリアしたんですか?
神酒:うちは、Webに限り肖像権を無期限契約できるキャストを集めました。Web専門の芸能事務所ですね。他の制作会社や代理店からも大量に依頼を頂いていて、みんな困っていたんだなぁ、と。 ウェブ動画業界全体の底上げにつながればと思っています。
(キャスティング担当・池野のインタビュー記事はこちら)
ムービーインパクト、次の10年はどうなるでしょう。
神酒:5Gになるし、家電の進化や自動運転などで一般の人の可処分時間も増えていく。自由な時間にコンテンツも観たくなるだろうし、仕事は減らない だろうなぁと思います。
個人的にやりたいのは、VRです。特に180°の3D。
VR…新しいチャレンジですね。
神酒:今までにない没入感がいいですね。生々しい、リアリティーを活かしたコンテンツを作りたいです。すぐには広告動画のビジネスモデルにはならないだろうけど、いろいろ企んでいます。
神酒大亮(みきだいすけ)
株式会社ムービーインパクト代表取締役。
1975年熊本県生まれ。 現代写実絵画を学び、大学院で複製技術時代における芸術を研究。学生時代に監督した「Blue Moon Cafe」がぴあフィルムフェスティバル入賞。以降も「サイクロプスの涙」「Mine」「大舞台は頂いた!」といった劇場上映作品を制作。NHKテレビ番組のチーフディレクターなど映像全般の経験がある。
2007年、YouTubeで「勝手広告」と題した映像作品を発表。2008年4月、株式会社ムービーインパクトを設立し、コンテンツ型動画広告の制作受注を開始。
日経MJ、テレビCM審査員など歴任。 2019年度より広島市立大学芸術学部デザイン工芸学科にて映像メディア造形非常勤講師。