お客様に本音を言ってもらえる関係を築きたい | ムービーインパクト ディレクターインタビュー
2019.04.13
ライター:梶川美輪子
ムービーインパクトのディレクターは、映像制作の全行程を一人で担当するんですね。
市原:企画、脚本、撮影、編集まで、クリエイティブ全般を担当ディレクターが進めていきます。
最初の打ち合わせには、社内すべてのプロジェクトを把握する樋口も同行しますが、制作段階でのクライアントさんとのやりとりは、ディレクターも入り直接行います。(樋口プロデューサーのインタビュー記事はこちら)
間に他社が入らず、社内で完結するフローです。
市原:仲介や外注にかかるコストが抑えられますし、スケジュールや予算の管理、調整もしやすくなります。
色々な人を挟むと、良い意味で膨らむこともありますが、こじれることもけっこうありまして、思ってもいないところにトラブルが飛び火したり、クライアントさんの本来の思いが聞けなかったり…。
一人のディレクターが窓口となってやりとりするので、お客様に本音を言ってもらえる関係が築けるのかなと思います。予算も把握しているので、ご要望にもその場で具体的な提案ができますし。
どのような方法で、どこまで実現できるか、といったことでしょうか。
市原:そうですね。正直に、できることできないことをお伝えしながら制作していきます。脚本書くのも撮影組むのも自分なので、予算内で最大限どこまでできるか、判断できます。
予算を気にしすぎることが良いことなのかというと、必ずしもそうではないかもしれませんが…無視したクリエイティブは、結局できる範囲まで戻すことになり、後でズレが出てしまうこともあります。
予算まで把握しながらすべてを担うとなると、プレッシャーも大きいですね。
市原:一人で作らせてもらうことは、自分の世界観や思いを出しやすいという側面があり、ディレクターとしてやりがいを感じます。
結果が悪くても「俺がやったのは演出だけだし、企画のせいだ」みたいなことも言えないですしね。
責任逃れしているうちはアドベンチャーはできないかなと思っています。もちろん、社内のメンバーと協力する場面は多々ありますが、クリエイティブに関しては、自分が責任を負って自分で回収するしかない、という覚悟です。
一作一作、緊張感を持って仕事をしています。
どのように進行していくのでしょうか。
市原:まず、グラデーションをつけたような異なる方向性の企画をいくつか考えます。
手堅い案も出しますが、クライアントさんが思いもしないようなものも必ず提案するようにしています。時々、樋口さんに「さすがに、やめておけ」と止められるようなヤバいアイデアが浮かぶんですけど、頼み込んで出させてもらう事もあります。
やはり、ご自身が一番撮りたい企画が通ることが多いんですか?
市原:そうでもないです。ディレクターの情熱はクライアントさんには関係ありませんし(笑)。選ばれたものを絵コンテに起こし、撮影、編集、という流れです。
某クライアント様の案件は、とても印象に残っています。視聴回数もあって、クライアントさんにも喜んでもらえたんですけど…YouTubeにはBANされてしまいました(笑)。その頃、ドラマの「昼顔」が流行っていて。不倫ドラマ風のCMに見せかけながら、実は全く関係ない、商品PRに繋がる内容なんですが…。
ムービーインパクトに依頼される方は、インパクトや面白さを求められる人が多そうですが。
市原:その傾向はありますね。
BANされた時、クライアント様は怒るどころか「ちょっとやり過ぎましたね」と面白がっていただきました。結果は大変申し訳なかったのですが、そういうことを一緒にやらせていただき、楽しかったですし勉強になりました。
テレビCMにはない、ウェブならではのエピソードです。
市原:ウェブでは、CMのあり方自体がどんどん変わってきていますよね。
尺もスタイルも、今までにないユーザー体験が求められている気がします。もはや、コピーもない、企業名すら出ないWebCM、映画のように長いWebCMもアリ。コンテンツに力があれば、クリック、検索に繋げることができます。
これからどんなウェブCMを作りたいですか?
市原:クライアントさんに「自由にやって」と言ってもらって作ると、数字が良い事が多いんです。無難なものにおさめずに、ユーザーの望む、面白い動画になっているか意識していきたいです。
コンテンツとしては、ストーリーがしっかりあるものを作りたいですね。
長尺CMや、シリーズものでしょうか。ドラマや映画の現場経験が活きそうですね。
市原:ムービーインパクトに入る前は、時代劇の撮影所で助監督をしていたこともあります。いろいろな映像に携わってきましたが、正直、最初は広告業界には興味はなかったんです。
ですが、実際やってみたら面白かったんです。映画の目的は視聴者を楽しませることですが、CMは商品あってのもので、ただ楽しいだけではなく、うっとおしがられず、いかにエンドユーザーに届けるか。考える要素がいっぱいで、奥深いです。
市原悠(いちはら ゆう)/ ディレクター
1985年生まれ、滋賀県出身。日本大学芸術学部映画学科卒。
松竹京都撮影所で時代劇の助監督をつとめた後、映画、ドラマ、MVなどの現場を経験。好きな映画監督はキューブリック、押井守。
一人で脚本、演出、撮影、編集なんでもこなし、社内スタッフに「逸材」「デキる男」と言われている。