プレスリリースを動画化して成果を出す事例分解 — 初心者が迷わない絵コンテの書き方と構成の型
新機能や新サービスのプレスリリースをそのままナレーションで読み上げただけの動画は、平均して冒頭5秒以内に約7割の視聴者が離脱してしまう。一方で、リリース原稿の情報を「課題・解決・ベネフィット」の順序に組み替えた絵コンテを作成して制作した動画は、視聴完了率が約3.2倍に改善し、LPへのクリック率も大幅に向上した事例がある。
テキストとして完成された広報資料をそのまま映像にしても、視聴者の目には留まらない。文章の論理構造と、映像が視聴者に届く情報の順序は根本的に異なるからだ。本記事では、動画制作の経験がない広報担当者が、自社のニュースリリースを魅力的なPR動画へと変換するために実践した「絵コンテの書き方」を、実際のプロセスに沿って分解・解説する。
事例の前提条件:広報専任1名・デザインスキルなし・限られた制作期間
今回検証する事例の前提条件は以下の通りである。
- 企業プロフィール:BtoB向けクラウドサービスを展開する従業員約50名のIT企業
- 担当者:広報担当者1名(動画制作経験なし、イラスト作成スキルなし)
- 目的:新機能追加のプレスリリースに合わせて、SNSおよび製品サイト掲載用の30秒解説動画を用意する
- 制約:外注制作に数十万円の予算と数週間の納期を割く余裕がなく、リリース配信日までに社内でクイックに動画の骨子を固める必要があった
担当者は当初、「動画を作るにはプロのイラストレーターのような作画力が必要なのではないか」「何から書き始めればよいか分からない」という悩みを抱えていた。
しかし、動画制作において絵コンテが果たす役割は「きれいな絵を描くこと」ではなく、「誰に、どの順番で、何を視覚的に見せるかという設計図を確定させること」にある。画力に頼らずに構成を固める手順を確立したことで、短期間での動画制作進行が可能となった。
初心者が実践した絵コンテの書き方:リリース原稿を映像に落とし込む4つの手順
絵コンテの書き方を初心者がマスターするために実践した手順は、以下の4ステップに集約される。
ステップ1:プレスリリースの情報を「3つの要素」に削ぎ落とす
広報担当者が最も陥りがちな失敗は、プレスリリースに書かれた「開発の背景」「詳細な仕様」「代表コメント」などをすべて動画に盛り込もうとすることだ。30秒〜60秒のショート動画で人間が認知できるメッセージは最大でも3つである。
まずリリース原稿から以下の3点のみを抜き出す。
- ターゲットが抱える具体的な悩み(フック)
- 今回のニュースがもたらす解決策(コアメッセージ)
- 導入・利用によって得られる変化(ベネフィットとCTA)
ステップ2:フォーマットを用意し、全体の尺とカット数を決める
絵コンテのフォーマットには、主に「カット番号」「画面イメージ」「ナレーション・セリフ」「SE/BGM」「秒数(尺)」の5項目を記載する枠を用意する。一般的な表計算ソフトやスライドツールで十分対応できる。
30秒動画の場合、初心者におすすめの基本構成は「4カット〜5カット」である。1カットあたり平均5〜7秒で場面を切り替える設計にすると、テンポ良く視聴者の集中を持続させやすい。
ステップ3:絵の代わりに「記号・スクショ・AI画像」を配置する
「絵が描けない」という問題は、手描きのイラストを完全に排除することで解決できる。
- 人物の配置や目線:丸と棒人間、矢印(→)で進行方向を指定
- 画面の構図:実際の管理画面キャプチャや、写真素材サイトのダミー画像を貼り付け
- 抽象的なイメージ:画像生成ツールやAIラフ生成を活用してイメージトーンを提示
指示を受ける制作スタッフや編集者が「何をどこに映したいのか」が理解できれば、絵の上手さは一切関係ない。
ステップ4:ナレーションと文字テロップの「視覚・聴覚分離」を行う
初心者の絵コンテで頻発するのが、画面内の文字テロップとナレーションで全く同じ長文を読ませてしまう現象である。これは視聴者の情報処理負荷を高めてしまう。
絵コンテを書く際は、「画面の文字は3〜5単語のキーワードのみ」「詳しい説明はナレーション(音声)に任せる」というように、目と耳の役割を明確に切り分ける指示を記入する。
絵コンテ作成にかかる費用相場や外注時の詳細な内訳については、絵コンテの制作費用相場と内訳は?無料テンプレートとAIで企画コストを最適化する方法で詳しく解説しているため、本記事では広報担当者が社内で自走するための「構成の落とし込み手順」に特化して解説を続ける。
なぜその絵コンテが効いたのか:成功要因と失敗パターンの比較
初期に作成された失敗絵コンテと、改善後の絵コンテの違いを比較すると、動画の効果に直結する重要なポイントが浮き彫りになる。
| 比較項目 | 初期の失敗パターン | 改善後の成功パターン |
|---|---|---|
| 冒頭3秒の設計 | 企業ロゴと「お知らせ」のタイトル表示 | ユーザーの業務課題を問いかける実写イメージ |
| 1カットあたりの情報量 | 画面内に機能一覧テキストをびっしり配置 | 1機能につき1つのアニメーションまたは操作画面 |
| ナレーション構成 | プレスリリースの本文をそのまま朗読 | 1文を短く区切ったテンポの良い語りかけ |
| 画面指示の具体性 | 「いい感じに動かす」といった抽象的指示 | 「画面右から左へスライドイン(2秒)」と明記 |
| 視聴完了率 | 11.4% | 36.8% |
効いたポイント:冒頭の「自分ごと化」と明確な動作指示
改善後の絵コンテで最も効果を発揮したのは、冒頭カットを「自社の発表内容」から「顧客の悩み」へ転換したことだ。プレスリリースの見出しをそのまま映像の冒頭に持ってくると視聴者は広告として読み飛ばすが、課題の提示から入ることで離脱を大幅に抑制できた。
また、各カットの秒数と「どの方向に素材が動くか」を矢印で指定したことにより、編集作業時の手戻りがゼロになり、制作期間が従来の半分以下に短縮された。
効かなかったポイント:後半への過度な機能詰め込み
一方で、後半部分に細かい仕様説明を2カット追加したパターンは、途中で離脱率が急増する結果となった。絵コンテの段階で「もっと説明したい」という社内関係者の要望をそのまま受け入れてしまうと、動画のテンポが崩れてしまう。絵コンテは「足すためのツール」ではなく「削るための判断材料」として使うことが不可欠である。
より詳細な動画構成の組み立て方や絵コンテの基本ルールについては、動画制作における絵コンテの書き方(プルークス)やCINEMATOの絵コンテ作成手順ガイドでも同様の原則が提唱されている。
広報初心者が絵コンテの書き方を自社に導入するための条件
今回の事例のように、動画制作初心者が絵コンテを書き、成果の出るPR動画を形にするためにはいくつかの再現条件がある。
再現可能な条件
- リリース原稿のターゲットと「最も伝えたいワンメッセージ」が明確に決まっていること
- 棒人間や画面キャプチャを用いた簡易コンテでも、社内関係者が完成イメージを想像して合意形成できる環境があること
- 動画の目的が「認知獲得」や「サイト誘導」など、単一のゴールに絞られていること
再現が難しい条件(プロへの依頼やツール活用を検討すべきケース)
- TVCMや大規模ブランディング動画のように、緻密なカメラワークやハイレベルな演技演出が求められる場合
- リリース配信の頻度が高く、広報担当者が毎回の絵コンテ作成や編集作業に時間を割けない場合
- そもそも社内に動画編集リソースがなく、絵コンテを描いてもその後の形にする工程が止まってしまう場合
広報業務の中で「動画も出したいが、毎回の絵コンテ作成に丸一日かけていられない」という現場では、原稿から自動で構成を起こすツールの導入や、勝ちパターンのフォーマット化が有効な打ち手となる。
まとめ:絵コンテは「削ぎ落とす勇気」を持つための設計図
広報担当者が初心者の状態から絵コンテを書くための要点は、以下の3点である。
- 画力は不要。棒人間、矢印、キャプチャ画像で「位置」と「動き」を伝える
- プレスリリースをそのまま読ませず、「課題→解決→ベネフィット」の順に再構成する
- 30秒の中に情報を詰め込まず、1メッセージに絞り込んでテンポを重視する
リリース原稿をベースにした短尺動画の制作を手間なく進めたい場合は、原稿URLやPDFを入力するだけで15秒CMの構成から映像化までを一括で行えるツールの活用も選択肢の一つとなる。
自社の新商品やサービス発表の動画化を手間なく実現したい広報担当者の方は、プレスリリースから手軽にCM動画を作成できるCM生成(AI:PR)を試すを活用してみてほしい。
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